2016.02.04360channel Report:Vol.2 マクドナルドの死角
ドナルドの後ろ姿に、ただならぬ寂しさ
今「ドナルド」といえば、ドナルド・トランプ氏を想い浮かべる方が多いのではないでしょうか?彼が歯に衣着せぬ発言で大統領選共和党候補として快走する一方で、同じアメリカ出身のドナルド・マクドナルド(マクドナルドのマスコットキャラクター)は、日本での相次ぐ閉店に影を落としています。
先月の日経新聞の発表では「米本社が最大33%の日本マクドナルド株の売却を検討している」ということが明らかになりました。私たちのオフィスから近い日本最大の原宿表参道店も、ついに閉店しました。そして、私がよく利用していた最寄の駅ナカ店舗も先週末に閉店。身近なところで閉店が相次ぐと、いよいよマクドナルド日本撤退?なんて噂が飛び交うのも理解できます。ただ、こうした状況に、寂しさを覚えているのは私だけでしょうか?
マクドナルドが日本に誕生してから約45年。私たちの身近な存在であったマクドナルドがここまで低迷し、再建の危機に直面していることは誰もが気になることだと思います。なので、今日はそのことについて考えたいと思います。
まず、記憶に新しいのは、2014年夏に問題となった、賞味期限切れの鶏肉を使用したチキンマックナゲットです。確かにあれが引き金となって、私自身も来店の機会が激減しました。彼らが何十年もかけて築いてきたブランドがあっという間に崩れていく様子を目の当たりにし衝撃を受けました。
しかし、マクドナルドの失速は、それ以前からはじまっていました。ある調査では、2012年を境にマクドナルドの顧客満足度が下がり始め、リピート率も転落していると示しています。
マクドナルドの死角
では、何がそのような結果を招いたのでしょうか?
1つは、店舗運営の極端な効率化です。このとき、店舗ではカウンターのメニュー表がなくなりました。カウンターでの注文時間を短くすることで、お客様の待ち時間が少なくなり回転率があがると踏んでいましたが、結果的にはこれが裏目に出てしまいました。また、これまでメニューの片隅にあった「スマイル0円」の表記もなくなったそうです。お客様の目線から考えると、待ち時間が少なくなるのは嬉しいことですが、たくさんのメニューの中から選ぶのも楽しみですし、注文を急かされるより丁寧に対応されたほうが印象は良いものです。まさに、合理的かつ売り手の発想が招いた落とし穴だと思います。
2つ目が、急速な店舗のフランチャイズ化です。2007年に71%だった直営店比率が、2012年には34%にまで下がっています。そもそもマクドナルドの収入源は、ハンバーガーの販売と不動産リースから成り立っていました。なので、直営店はフランチャイズ店よりも固定費がかかり収益が悪い。また、株主からすると、収益性が悪い店舗を減らしフランチャイズ化することで、目に見えて財務体質が改善できると考えられていました。しかし、パートナーの育成や考え方の浸透には時間もかかり、また目には見えない経験や理解度を見誤ることもあったかもしれません。従業員のモチベーションが、そのまま接客にあらわれるサービス業においては、とても時間がかかる工程のように思います。
そして、3つ目が、アメリカ式の経営スタイルの限界です。メニューの開発においても、フランチャイジーとの関係構築においても、奥床しく義理と人情を重んじる日本人において、アメリカ式一辺倒ではうまくいかなかったのではないでしょうか?義理と人情というと少し古くさい感じもありますが、少なくとも私たち日本人の精神の中に、脈々と受け継がれているものの理解が経営に反映されなかったのかもしれません。Big Americaキャンペーンが不発に終わったのも、アメリカの成功事例をそのまま日本に持ってきたことに由来しています。
「全てのコストの負担者は消費者である」
故水口健次さんの言葉が蘇ってきました。マクドナルドが再び消費者と向き合い、この危機を乗り越え私たちに「笑顔(スマイル)」を提供してくれるよう復活することを期待して終わりたいと思います。